*本記事の内容は、一般的な情報を基に作成したものであり、特定の金融機関等を指したものではありません。
詳細については、各金融機関等にお問い合わせください。
ペアローンを組んだ自宅は離婚したらどうなる?よくある問題と対処方法
離婚するとき、「ペアローンで購入した共有名義の自宅をどうするか」と悩む夫婦は多いでしょう。
ペアローン特有の問題として、離婚後もローンの名義変更ができない、相手の同意を得られず自宅を売却できない等の問題が発生することも少なくありません。
ただし、問題が顕在化しても、状況に合わせた解決策はあります。自宅の売却やローンの一本化、相手の持分を買い取るなど、状況に応じて適した解決策を検討しましょう。
本記事では、離婚時に起こりうるペアローンに関する問題を具体的に解説し、より良い選択をするためのヒントをお伝えします。
■この記事の監修者
續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士)
生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。
渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
ペアローンとは
ペアローンとは、自宅を購入する際に、夫婦それぞれが住宅ローンを契約する方法です。まずは、基本的な仕組みやメリット・デメリットについて見ていきましょう。
ペアローンの仕組み
ペアローンでは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約します。1つの住宅に対して2本の住宅ローンを組むため、夫婦共働き世帯において活用されることが多い住宅ローンの形態です。
例えば、7,000万円の住宅を購入する際に、夫が4,000万円・妻が3,000万円の住宅ローンをそれぞれ組むようなイメージです。なお、ペアローンを利用して購入した物件の所有権は両者の共有となり、それぞれの持分は一般的に住宅購入資金を負担した割合が反映されます。
ペアローンでは、夫婦がそれぞれの住宅ローンの連帯保証人となります。つまり、どちらかが返済できない状況になると、もう1人が自分のローンも含めて返済しなければなりません。
ペアローンのメリット・デメリット
昨今は住宅価格が上昇しており、ペアローンを選択する夫婦が増えています。ペアローンのメリットとデメリットをまとめると、以下のとおりです。
メリット |
・借入上限額が増える |
---|---|
デメリット |
・契約にかかる諸費用が増える可能性がある |
1人だけでは希望の融資を受けられなくても、2人であれば希望額に届く可能性があります。それによって購入できる自宅の選択肢が広がる点は、ペアローンを活用するメリットです。
また、ペアローンではそれぞれが住宅ローンを契約します。「夫は変動金利、妻は固定金利」のように金利タイプを柔軟に選択できたり、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられたりするメリットがあります。
一方で、1世帯で2本の住宅ローンを契約するため、諸費用も2人分となる点に注意しましょう。また、団信(団体信用生命保険)によって保障される残債は、亡くなった方の住宅ローンのみです。
ただし、近年では夫婦のどちらかが亡くなった場合に、もう一方のローンの残債も完済される「連生団信」という団信が登場しています。
ペアローンを組んで離婚した場合に起こりうる問題
現在、日本では3組に1組ほどの夫婦が離婚しているといわれています。ペアローンで住宅を購入したあとに離婚をすると、さまざまな問題が発生するため注意しましょう。
住宅ローンの名義変更をすることはできない
離婚したからといって、一般的に住宅ローンの名義変更はできません。住宅ローンの契約時は、2人分の収入に基づいて、返済能力を評価しているためです。
住宅ローンは、契約時に審査を受けた人の信用と返済能力に基づいて条件が決まります。そのため、契約期間の途中で契約者を変更することはできないのです。
離婚後も住宅ローンの返済義務が残る
完済しない限り、離婚後も住宅ローンの返済義務は残ります。現在の住居を出たとしても、返済を継続しなければなりません。
つまり、離婚後の新しい自宅での住居費と住宅ローンの返済が重なるため、二重の支払いが発生します。場合によっては、経済的に苦しくなってしまう可能性もあるでしょう。
さらに、ペアローンではお互いが連帯保証人になるため、元配偶者が返済に遅れると、自分が元配偶者の分まで返済する必要があります。
売却には相手の同意が必要となる
共有の状態だと、売却するときは相手の同意が必要です。元配偶者が売却に同意しない場合、「売りたくても売れない」という状況に陥ってしまいます。
いずれかが同じ自宅に住み続ける場合、同意が得にくくなる可能性があります。
オーバーローン(借入額が担保価値を上回る状態)になる
売却できたものの、ローン残高を下回る価格でしか売却できない「オーバーローン」が起こるかもしれません。オーバーローンだと、そもそも金融機関が売却を認めない可能性もあります。
オーバーローンでも、不足額を預貯金の取り崩しなどでカバーして返済できれば、その後の返済はなくなります。ただし、手元に十分な預貯金がない場合、売却後も残債部分の返済は継続しなければなりません。
離婚する場合にペアローンの問題を解消する方法
離婚したときに発生するペアローンの問題に対処する方法は、いくつかあります。離婚後も自宅に住み続けるかどうか、住宅ローンの借り換えができるかどうかなど、状況に応じて適切な対処法を選択しましょう。
自宅を売却する
購入した自宅を売却する方法が、シンプルで分かりやすいでしょう。売却額がローンの残債を上回る「アンダーローン」であれば、双方の返済義務がなくなります。
これにより、連帯保証人の立場からも解放され、残債を超える売却額はそれぞれで分配できます。
ただし、オーバーローンの場合は、売却額で不足する分を預貯金などでカバーしなければなりません。売却を検討する際には、「残債はいくらか」「自宅はいくらで売れるのか」「手元の預貯金はいくらか」を確認しましょう。
ローンを返済しながら住み続ける
現在のローンを返済しながら、自宅に住み続ける方法があります。子どもの生活環境を変えたくない場合や、仕事の都合で転居が難しい場合には検討しても良いでしょう。
この場合、現在のローンの返済を継続すれば、自宅に住み続けても問題ありません。ただし、自宅を出ていく元配偶者が返済に遅れた場合、自分に返済義務が生じる点には注意が必要です。
現在の自宅から出る場合、事前に金融機関へ相談しましょう。住宅ローンを完済せず、勝手に引っ越すと契約違反となる可能性があるためです。
住宅ローンを一本化する
金融機関によっては、「免責的債務引受」により、住宅ローンを一本化できる可能性があります。免責的債務引受とは、現在の債務者が負っている債務を第三者が継承することです。
例えば、妻が自宅に住む場合、妻が夫の住宅ローンを継承することで、住宅ローンを一本化できる場合があります。金融機関の審査を経て、許可を得られれば、これも選択肢の1つとなります。
住宅ローンの一本化が難しい場合は、住宅ローンの借り換えを検討しましょう。別の金融機関で新しく住宅ローンを契約し、借入れたお金で現在のローンを完済すれば、ペアローンを解消できます。
いずれの場合でも、金融機関の審査を通過する必要がある点に留意しましょう。
相手の持分を買い取る
相手の所有権を買い取り、ペアローンの問題を解消する方法があります。自宅に住み続ける方が、出ていく方が保有している持分に相当する金額を支払うことで、所有権者を1人にできます。
これにより、住み続ける方は自宅を手放さなくて済み、さらにお互いのローン関係を解消することが可能です。
相手の持分を買い取る際に手元資金が不十分な場合、金融機関から借入れる方法があります。例えば、新生インベストメント&ファイナンスが取り扱っている「資産承継ローン」では、離婚時における相手の持分を買い取る際の資金を融資しています。
離婚時のペアローンのリスクを抑える工夫
誰しもが何らかの事情で、離婚する可能性はあります。離婚時のペアローンのリスクを抑えるためには、自宅を購入する段階で、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
高価すぎる物件は購入しない
ペアローンのメリットは、1人分の収入ではなく、2人分の収入に基づいて住宅ローンを契約できる点です。購入できる選択肢が増えるため、ついつい快適な住環境を求めて高価な物件を購入したくなるかもしれませんが、高価すぎる物件の購入は控えたほうが賢明です。
高価な物件は借入額も大きくなるため、それに伴うトラブル発生のリスクが高まります。具体的なリスクとして挙げられるのは、以下のような点です。
- 離婚時の売却でオーバーローンになった場合、残債も大きくなる可能性がある
- ペアローンを一本化する場合、引受人の返済額が大きくなる
なお、ローンを利用する場合の返済負担率(1年間のローン返済額÷年収)は金融機関ごとに異なります。ゆとりを持った資金計画を立てたい場合は、返済負担率を低く抑えるのがおすすめです。
さらに、今後のライフイベントも加味して、保守的な返済計画を立てましょう。ペアローンで契約後、出産育児のために収入が減少したり、失業により収入が途絶えてしまう可能性があるためです。
十分な自己資金を蓄えておく
ペアローンを組む前に、十分な自己資金を用意すれば借入額を抑えられます。借入額を抑えることにより、オーバーローンなど、離婚時のリスクを軽減できるでしょう。
また、借入金額が少ないと、売却によるローン返済後に手元資金が残る可能性が高まります。このように、十分な自己資金を用意しておくと、万が一離婚することになっても経済的な負担を抑えられます。
借入期間を工夫する
借入期間を短く設定すると、借入期間が長いケースと比べて、返済のスピードが早くなります。順調に返済が進むことでオーバーローンの状態になるリスクを軽減でき、売却という選択肢が生まれやすくなるでしょう。
ただし、返済期間を短くすると月々の返済額が多くなるため、生活に支障が出ないように配慮する必要があります。
お互いが納得できる、最適な方法を選択しましょう
ペアローンは夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約する方法で、借入上限額の増加や住宅ローン控除の二重適用といったメリットがあります。一方で、離婚時には住宅ローンの名義変更ができなかったり、離婚後も返済義務が継続する可能性がある点に注意しましょう。
特に、売却で得られるお金よりもローンの残債が上回る「オーバーローン」になると厄介です。ローンの返済が続くことで、生活に影響が出る恐れもあるでしょう。
これらのリスクを軽減するためには、無理のない価格の物件を選び、十分な自己資金を用意することが大切です。また、できるだけ早く返済を進めるために、借入期間を短く設定することも検討しましょう。
新生インベストメント&ファイナンスでは、ペアローンで発生する問題への対処法の1つとして、相手方の持分を買い取るための「資産承継ローン」をご用意しています。離婚したときの対策として、ぜひご検討ください。
離婚時のペアローン問題に関するよくある質問
最後に、離婚時のペアローン問題に関して、よくある質問を紹介します。
離婚後、妻が家に住み続けることはできますか?
はい。できます。離婚をしても、ローンは共有名義のままです。そのため、夫婦間で話し合った結果、「妻が住み続ける」という合意に達すれば、妻がそのまま住み続けても問題はありません。
ただし、ペアローンの場合はどちらか一方の返済が滞れば、もう一方に返済義務が及ぶ可能性があります。また、住宅ローンの名義を妻に一本化しようとしても、金融機関の審査を通過する必要がある点に注意しましょう。
離婚後、ペアローンで組んだ自宅を夫か妻どちらか一方が買い取りできますか?
相手の持分を買い取ることは可能です。買い取ることにより、住み続ける方は自宅の完全な所有権を得られ、さらにお互いのローン関係を解消できます。
ただし、一般的な住宅ローンは、利害関係がない者同士の取引で決定する不動産価格を軸に商品設計されています。元夫婦には利害関係があり、夫婦間での持ち分売買は不動産価格の妥当性がないため、独自に不動産価格を査定する不動産担保ローンを検討することになります。
新生インベストメント&ファイナンスが用意している「資産承継ローン」は、相手方の持分を買い取るために活用できます。十分な預貯金がない場合には、利用をご検討ください。
ペアローンを解消する方法はどのようなものがありますか?
ペアローンを解消する方法は、主に以下の4つです。
- 自宅を売却する(ローン残高を下回らない価格で売却できれば完済可能)
- 住宅ローンを一本化する(住み続ける側が「免責的債務引受」で相手のローンを引き継ぐ)
- 住宅ローンの借り換えを行う(新しいローンで現在のローンを完済)
- 相手の持分を買い取る(住み続ける側が、出ていく側の持分相当額を支払い所有権を一本化)
相手の持分買取りや住宅ローン借り換えの費用について、いくつかの金融機関に相談しながらご自身の状況にあった融資商品を検討するのも一つの方法です。新生インベストメント&ファイナンスの「資産承継ローン」も問題解決のための選択肢となる可能性もありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。